2008年10月20日

東北秋旅・その2

 私はぶらぶらと歩いた。めざすは鶴岡公園(鶴ヶ岡城址)を中心とする、史跡が集まるエリアだ。しかし、主な施設は9時からしか入れないので、まっすぐ行くと時間が余ってしまう。寄り道をしながら行けば、良い時刻になるだろう。
 ちょっとした史跡に立ち寄ったり、川を泳ぐ鴨の写真を撮ったりして(鶴岡は実にカモが多い!)時間を潰し、鶴岡公園に到着したのはちょうど9時頃であった。
 私がたどり着いた入口の先には鳥居があり、奥には神社の社殿が見える。これはよくあることだが、左手に動物の檻が2つあるのは珍しい。1つには猿、もう1つには孔雀や鶏などの鳥類が飼われていた。無料で見られるのは良いが、飼育費に見合う集客力があるかは疑問だ。
 堀の向こうに白壁の洋風建築が見えたので、まずはそこに行ってみる。大宝館という大正時代の建物で、中は明治以降の庄内の人物を紹介する資料館になっていた。手短に見学を済ませ、再び堀の外へ。
 次に訪れた致道博物館は、今回の旅で最も楽しみにしていた施設だ。ここの敷地内には庄内地方の古い建物が集められていて、庄内藩酒井家の庭園もあるという。愛知県にある明治村の小型版のようなものだろうか。
 この予想は全くの外れではなかったのだが、こちらは街中ということで敷地が狭い。中には新しい建物もあり、全体的に窮屈な印象を受けた。順路があるようなので、1つずつ順番に見ていくことにする。DSCN0066.JPG
 それぞれの詳細は省略するが、歴史のある建築物は、いずれも相応の風情があり、なかなかおもしろかった。博物館というだけあって、中に展示のある建物がほとんどだが、内部に関して特に良いと思ったのは、養蚕農家の内装を残している旧渋谷家住宅(写真上)くらいだった。まあ、700円という料金を考えると、こんなものだろうか。
 続いて庄内藩校「致道館」を訪ねる。江戸時代の藩校の建物の一部が今も残っていて、内部も見学できる(写真中)。藩校の歴史や概要についての展示もおもしろかった。無料ということもあって、ここは大満足。DSCN0087.JPG
 次は少し歩いて旧風間家住宅「丙申堂」へ。ここは明治時代に建てられた商家で、初老の女性が内部を案内してくれた。まさか単独の客に案内が付くとは。客が少なく人手が余っているのだろうが、それにしても驚いた。
 この家の最大の特徴は、瓦ではなく石を置いた屋根だとのことで、2階に案内されて窓から眺める(写真下)。確かにこれは珍しい。その後、1階も一通り案内してもらい、写真も何枚か撮った(ここは撮影自由)。DSCN0098.JPG
 少し歩いて風間家の別邸「釈迦堂」へ。これも明治時代の建物らしい。こちらは案内こそなかったが、純和風の建築と庭園を堪能できた。料金は丙申堂、釈迦堂共通で400円。鶴岡の施設はどこも良心的だ。
 釈迦堂を出たのは11時半頃。鶴岡駅12時12分発の列車で酒田に向かう予定なので、そろそろ時間がなくなってきた。できれば鶴岡で昼食を取りたかったのだが、適当な店はなく、店を探す時間もない。近くのバス停まで少し歩き、バスで鶴岡駅へ移動。
 予定通りの列車に乗り込む。朝起きたのが5時前で、鶴岡でもかなり歩いて疲れていたため、あっという間に眠ってしまった。
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2008年10月17日

東北秋旅・その1

「庄内に行こう」
 そう思い立ったのは、もう半年以上も前のことだった。酒井氏の城下町・鶴岡と海運業で栄えた港町・酒田。ネット等で調べれば調べるほど、どちらも魅力的に感じられた。
 庄内地方を通ったことは、何度もある。秋田、青森方面に行く際、たいてい経路になるからだ。しかし、なるべく遠くへ行きたいという気持ちもあってか、鶴岡や酒田で途中下車して市内観光を楽しむということはなかった。今から思えば、もったいないことをしていた気がしなくもない。
 この半年あまりの間、具体的にプランを立てたことは何度かあり、夜行列車の座席指定を取ったこともあった。しかし、諸々の事情により、実現には至らなかった。
「やっと行ける」
 これが、出発にあたっての正直な思いだった。

 10月12日の午前5時前、新潟駅で夜行快速ムーンライトえちごを追い出された(終点だから当然だが、時間帯からしてそんな気持ちになる)私は、快速村上行きに乗り継ぐ。意外によく眠れたためか、車内がやや寒かったためか、眠気はあまりなかった。途中で空が白み始める。こんな時間に起きていることなど滅多になく、旅をしていることを改めて実感した。
 村上からは酒田行きに乗り継ぐ。ここからしばらくは、笹川流れと呼ばれる景勝地だ。線路が海のすぐ近くを通っており、目の前には海岸線や奇岩、遠くには粟島が見える。車内は旅行者が多く、デジカメで車窓の風景を撮る人も何人かいた。
 線路が海から離れると、車窓は米どころ庄内の田園風景に。平凡な風景だが、東京という超のつく大都会に暮らす私にとっては新鮮だ。これは、極めて不自然で不健康な生活をしていることの証明であるとも言える。
 最初の目的地である鶴岡に着いたのは7時半を少し回った頃。朝食がまだだったので、まずは駅前にあったミスタードーナツに入った。
posted by せた at 01:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月06日

長い長いトンネルを抜けても

 私は震えていた。勝ちをはっきりと意識していた。目の前にあるのは必勝の局面。優勢とか勝勢とか、そんな次元ではない。ものすごい駒得で、相手の攻め駒はほとんどない。反則や時間切れをやらかさない限り、負けようがない局面だ。
 いつの間にか、他の対局は全て終わり、感想戦をしているところすらなかった。ギャラリーもほとんどいない。相手チームのメンバーは数人いたが、ウエスタンのチームメイトは誰もいないようだ。おそらく、チームの勝ちはとっくに決まっているのだろう。
 少し孤独感を覚えた。チームメイト達は機嫌良く雑談をしているに違いないが、自分だけ戦いの場に取り残されている。早く私も彼らと合流したいのに、相手はなかなか投了してくれない。
 形勢がはっきりしてから、既に50手ほど指しただろうか。自分が焦っていること、集中力が落ちていることには、とっくに気付いていた。そして、これまでの連敗は、自分に対する信頼も奪っていた。だから余計に震えた。また負けるんじゃないか。常識的に考えてまずあり得ないことだが、私はそれを強く恐れた。
 相手玉に詰みが見えた。詰みそうな局面はこれまで何度もあったが、絶対の自信はなかったので詰ましにいかなかった。しかし今度は簡単だ。龍を切って桂を打てばあとは並べ詰みだ。桂を打ったところで、ようやく相手が投了。とにかくホッとした。

 ここまで、長い長いトンネルだった。互角以上の形勢で終盤に入りながら勝ちきれない、そんな将棋が続いた。24や一般大会はそうでもないのに、社団戦だけ勝てなかった。この日を迎えた時点で個人成績は1勝4敗で、勝った1局は必敗の局面で相手の時間が切れたものだった。
 原因はわかっていた。心が乱れているのだ。負けが続いているから、早く勝ちたいと思ってしまう。じっとプレッシャーをかけたり、相手の手を殺したり、30秒将棋になるとそんな手が指せなくなる。しかし、わかっていても、対局になると思うように事は運ばなかった。
 正直に言って、社団戦で将棋を指すことが苦痛になりかけていた。チームの役に立たず、自分自身が充実感を味わえず、楽しむことすらできない。これでは社団戦に出る意味がないように思えた。団体戦引退も考えるほど、私は追い詰められていた。
 当日になっても、思いは変わらなかった。割り切って考えることなどできなかった。進退をかけた戦いに臨む、そんな心積もりだった。

 ところが、この日の1局目で、私はまたも優勢だった将棋を落とした。中盤での積極策が功を奏したのだが、その後相手の飛車を追い回したのがヤブヘビで、その飛車を急所に転回され逆転してしまった。
 言うまでもなく、私はかなり落ち込んだ。このまま次の対局に臨んでもまた逆転負けを食らうような気がした。だから、主将には次局外れたいと言った。
 主将の回答は「外しても良いが残りの2局も出られない可能性が高い」というものだった。どうしようか少し迷ったが、結局次も出ることにする。この1局だけで終わるわけにはいかない。しかし、またチームに迷惑をかけるのはないかという不安は、消えることはなかった。

 かくして迎えた本日の2局目、この将棋は作戦があまりうまくいかず、自信のない分かれだったが、相手が強引に手を作ってきたため、それを咎めて優勢になった。この時点ではカウンターで勝つことも考えてはいたのだが、相手が持ち駒の銀を受けに使ってきたので、全駒にすると決めた。
 あとはとにかく安全運転を心掛けた。「詰みより全駒」という、どこかで聞いた言葉を思い出し、石橋を3度叩いても渡らないような指し方をした。某氏は後で「せたさんはフルボッコにしてた」というような表現をしていたが、私にはそんなつもりはなかった。単に負けるのが怖く、絶対負けないように指しただけだった。

 あとの2局は、前述のとおり抜け番である。機嫌を良くしてあとは高みの見物といきたいところだが、私が抜けるとなぜかチームは苦戦する。3試合目は3-4の惜敗だった。私の個人成績が2勝5敗なのに、出た試合のチームの結果は6勝1敗、出なかった試合は1勝3敗だ。相手関係もあるだろうが、不思議なものである。
 4試合目は安心して見ていられる展開だったので、大熱戦だったウエスタンBの試合を主に見ていた。結果はウエスタンAが7-0の完封勝ちを収めたものの、ウエスタンBは惜しくも3-4で敗れた。応援しているとチームが負けるというのは、厄病神になったようで、あまり気分の良いものではない。

 さて、ウエスタンAの順位は現在4位。2位以上で自動昇級という目もないわけではなく、入替戦経由での昇級は自力である。しかし、昇級の可能性を高めるためには、10月の団体個人戦で勝点を稼いでおきたいところだ。
 しかし、ウエスタンAは関西在住者が多く、朝日アマ名人戦近畿地区大会と日程が重なったことから、団体個人戦はメンバーがかなり手薄になる見込みである。
 そういうわけで今度は、自分が期待されていることをひしひしと感じている。団体個人戦は同じくらいのレーティングの選手同士で手合いが付けられるので、ここまで不振の私は相手関係が楽になっているはずである。したがって、ここは私にとって負けられぬ戦いである。
 1つ白星は得たが、まだチームに貢献したという実感は全くない。足を引っ張った分の埋め合わせとしては、勝数1はあまりにも小さい。団体個人戦が不本意な結果だったら、再び引退の2文字が頭をよぎるだろう。
 しかし、団体戦に未練がないわけではない。できることなら、来年は1部で戦いたいと思っている。だが、今の自分にその資格があるとは思えない。だから勝つしかない。自信を取り戻し、チームメイトにも認められる必要がある。
 ゆえに、私はまだまだ戦う。内容ではなく結果のみを求め、勝つことだけを考えて戦う所存である。
posted by せた at 00:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 将棋 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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